言語習得に成功する人と失敗する人
外国語を学ぶ人たちの中には、学習に成功する人と、残念ながら思うようにうまくいかない人がいます。この二者を分けるものは何でしょうか。
この疑問を持ったのは、何も私たちだけではありません。世界中の言語教育の専門家や研究者が同様の疑問を持ち、言語学習の成功者についての研究に取り組んできました。彼らは、適正(向き・不向き)や性格、動機付けなどが言語学習の成功に関係があるのではないかと結論づけてきましたが、適正、性格、動機付け…どれも定義がはっきりせず、私たち学習者が自分で意識して簡単に変えられるようなものではなさそうですね。そこで、今日は自分の意識で変えることのできる「学び方」に着目したいと思います。
語学習ストラテジー(Language Learning Strategies/LLS)
言語学習ストラテジー(Language Learning Strategies/LLS)という言葉知っていますか?これは、「言語学習をより簡単に、速く、楽しく、自分中心で、効果的で、様々な状況に対応しやすくするために学習者がとる具体的な手立て」(オックスフォード, 1990) のことです。もっと簡単にいうと、「外国語を勉強する時に使う、自分に合わせた効果的な学習方法」のことです。どうやら外国語学習の達人たちは、自分の目的に合わせた幅広いLLSを(グリフィス、2008)、頻繁に活用しているようです(グリーン&オックスフォード、1995)。
さて、あなたに質問です。あなたは現在自分の学習目標達成のためにどのようなLLSを利用していますか?例えば、自分の単語学習を思い浮かべてください。あなたはどんなLLSを使って勉強していますか。以下から当てはまるものにチェックしてください。
自分が新しい単語を学ぶ時には…
1. 単語リストを作る。
2. 単語をノートに何度も書く。
3. 単語を発音する。
4. 辞書で単語について例文や同義語・反義語、品詞を調べる。
5. 単語をテーマごと(ビジネス、医療など)に分類して覚える。
6. 単語を使って例文を作り、人にチェックしてもらう。
7. 例文を自然に言えるようになるまで繰り返し練習する。
8. 会話の中で単語を使ってみる。
9. 単語リストやフラッシュカードを使って、発音と意味を自分でテストする。
10. オンラインアプリケーションと使い、テストする。
語彙習得のためのLLS
上に挙げたのは、世界中の外国語学習の成功者がボキャブラリー学習の際に利用したLLSの例です。あなたの学習方法と同じものがありましたか。私がAPU生の間でよく見かけるのは、1.と2.ですが、考えてみてください。1. リストを作り、2. スペルを何度も書いた後で身に付く単語力とはどのようなものでしょうか?単語を個体として正確に書く力は身につくかもしれません。したがって、テストで単語をスペルアウトすることを求められた時には有利です。でもこの力だけでは、多くのみなさんが目指すであろう「コミュニケーションで使える単語力」にはなっていませんよね。
コミュニケーションの中で単語を使うためには、どんな学習が必要でしょうか。私は以下の3つの学習ステージが必要だと思っています。
ステージ 1: 知識のインプット(と整理)
ステージ 2: 単語を使うためのトレーニング
ステージ 3: 忘れないための復習
ステージごとに使えるLLSとその注意点を以下に示します。
ここで皆さんに気づいてほしいのは、目的に応じて利用するLLSが変わるということです。皆さんが使っているLLSは自分の学習目的に合ったのものでしょうか、考えてみてください。
まとめ
繰り返しになりますが、LLSとは自分の学び方のことです。自分の学習スタイルや目的に合ったLLSの利用は学習の成功につながると言われています。現在思うような学習成果が出ていないと感じている人は、まず自分が身につけたい力について考え、「自分のとっているLLSがその力の習得につながるのか」ということを一度考えてほしいと思います。また学習を始めたら、「そのLLSは効果が出ているのか」「もっと良いLLSがあるのではないか」ということを自分に問い、柔軟にLLSを変え、広げていってほしいと思います。友達や先生(特にSALCの言語アドバイザー)に相談してみるのも良いと思います。
この記事を読んで、単語学習以外のLLSについてももっと知りたいと思った方は、APU教員と学生で作った以下のウェブサイトを訪れてみてください。
参照:
Green, J. M., & Oxford, R. (1995). A Closer Look at Learning Strategies, L2 Proficiency, and Gender. TESOL Quarterly, 29(2), 261–297.
Griffiths, C. (2008). Strategies from Good Language Learners. In C. Griffiths (Ed.), Lessons from Good Language Learners. Cambridge University Press.
Oxford, R. L. (1990). Language learning strategies: What every teacher should know. Newbury House.
Nation, I.S.P. (1990) Teaching and Learning Vocabulary. Newbury House, New York.
Article by: Professor ETO Tomoko, SALC Coordinator